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2005年11月21日 (月)

ウィニーで情報流出、北海道が逆転勝訴(その2)

先日本blogで紹介した、ファイル交換ソフトWinnyを利用した際にウイルスに感染し、北海道警の巡査の私物パソコンから少年事件に関する捜査資料がネット上に流出した事件の控訴審判決が、最高裁HPに掲載されました。

H17.11.11 札幌高裁 平成17年(ネ)第214号 損害賠償

本判決の論点はいくつかあるのですが、北海道警の所長等の管理担当者に情報の流出を防止すべき管理義務違反があったのか、の論点をとりあげてみますと、

 通達により、本来、私有パソコンを自宅に持ち帰る際には、公務に関する情報が残されていないことの確認を管理担当者等から受ける必要があることを認識していながら、管理担当者等のチェックを受けないまま本件パソコンを自宅に持ち帰ったことが認められるので、通達の徹底がなされておらず、捜査情報の持ち出し防止について確実な実施が行われていなかったことが認められるから、管理担当者等には、管理につき「不備があった」と認定しています。

これらの事実を認定しつつも「不備」とし、直ちに過失ありとは認定せずに、予見可能性の有無を検討しています(過失ありといえるためには、予見可能でなければならず、予見不可能の場合には、過失が否定されます)。

控訴審判決では、「①A巡査が本件パソコンを自宅に持ち帰った平成16年3月28日において,アンティニーGの出現が確認されてから5日程度しか経過していないこと,②アンティニーGが,それまでのウイルスとは異なり,パソコン内の情報が外部に開示・流出するという新たな特質を有すること,③アンティニーGについての情報は,ウイルス対策ソフトを扱う会社等一部のサイトに掲載されているにとどまっており,同月29日の京都府警における捜査情報の流出の新聞記事が出るまで,一般にはアンティニーGの内容が広まってはいなかったこと等を総合すると,管理担当者等において,本件捜査情報がインターネットを通じて外部に流出するという結果について,予見可能性があったということはできない。」

として、予見可能性を否定しました。地裁判決が「私有パソコン内に残存する公務に関する情報が私的な使用の際に外部に流出する危険は十分に予想される」として、抽象的に予見可能性を判断しているのに対して、高裁判決は、「過失の前提となる予見可能性は,結果発生に対する抽象的な危険を予見するだけでは足りず,加害者の行為から一定の経緯をたどって結果が発生するという具体的危険を予見することが必要である」としてかなり具体性を要求しており、判断が分かれたということができます。

 あまりに抽象的に予見可能性を判断すると実質的に無過失責任となり、過失を要求している趣旨が没却されてしまいますが、高裁判決のようにアンティニーGという具体的なウイルスに対する予見可能性を要求することは具体性を要求しすぎではないかと感じます。また、「②アンティニーGが,それまでのウイルスとは異なり,パソコン内の情報が外部に開示・流出するという新たな特質を有すること」と認定されていますが、パソコン内部の情報をばらまくウイルスはこれが初めてでなく(ファイル交換ソフトを通じて感染するウイルスでは初めてかも知れませんが)、その点でも認定に問題があるのではないでしょうか(ただ、この点については、地裁では争点ではなく、主張立証がなかったので、このような認定になったと見るべきなのでしょう)。

 もちろん、高裁判決の枠組みにしたがったとしても、アンティニーG等、ファイル交換ソフトを通じてのウイルス感染及び流出事件が多数発生している以上、今後は過失(予見可能性)が認定されることになるので、ウイルス感染による情報流出で責任を問われないということにはなりません。

参考:地裁判決
H17. 4.28 札幌地裁判決

本blogの参考リンク
ウィニーで情報流出、北海道が逆転勝訴…予見できずと : 社会 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)

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